新しい筆を前にして、さて、どの位筆の穂先をおろせばいいんだろう?使い終わったらどうしまえばいいの?など、ちょっとした疑問についてお話しします。
おろす範囲(穂先から1/3程度)を決めて穂の先端をつまみ、回すようにほぐし、さばきます。墨(墨液)につける前にさばいた所のフノリを水で洗い流しますが、その際、水分が残ったまま墨をつけて書くとにじみますのでご注意下さい。
筆のおろしていない根元部分に水が掛からないようにして、軽くつまみながら墨を洗い流します。洗い終わった筆は、風通しの良い日陰で吊るし干しを。
洗い方が不十分だと段々固まってきて筆の働きが悪くなり、ゆったりとした字が書けなくなります。この状態になってしまったら器に熱いお湯を入れ、筆を浸して一晩置きます(毛は痛みませんので心配いりません)。これは筆を固めている墨を柔らかくするためで、ぬるま湯では柔らかくなりません。少し柔らかくなったら爪で5ミリ間隔くらいに荒割りをし、両手に挟んでもみ洗いを。黒い汁が出なくなれば水中でクシをかけて毛を揃えて乾かします。
筆の毛が3本5本と抜け始めるのは、筆の中心部で軸に近いところが腐っているからです。抜けた毛の根元をよく見ると、黒く細くなっています。これは洗った後の乾燥が不十分で、腐るのに適した水分と温度と時間の条件が揃うからです。穂首の中心部までよく乾燥させるか、低温のところに置けば防止することができます。
羊毛
筆に使われる羊毛とは、山羊(ヤギ)の毛の事を指します。一頭の山羊で高級品から一般品まで十数種類の、それぞれ違った毛が取れます。
馬毛
主に中国内陸部の農耕馬の毛を使用。剛毛で腰が強いのが特徴です。近年中国も機械化が進み、入手しにくくなっています。
いたち毛
筆の原料として使用できる部位は尾の上側のみで、その他の毛は短すぎて使用できません。毛丈が短く、ほどよい弾力があり毛先も鋭くまとまるので、細筆・面相筆・写経筆などに使用されます。
狸(タヌキ)毛
毛先になるにつれて太くなり、弾力があって丈夫。日本狸のものは特に上質で、トメ・ハネ・ハライ等美しい線を表現します。
他に、鹿・猫・じゃこう猫・ムジナ・牛耳・豚・鼠・兎...などの動物の毛や、竹・藁(わら)・草といった植物の繊維、近年はナイロン毛による筆も作られています。